ハマに寄り添うデザイン~分野を横断したデザインとは~

NDCグラフィックスのホームページのPRには、次のような記載があります。

「NDCグラフィックスは、多様なデザイン分野を個別に考えるのではなく、それらを関係づけて、生活の視点で統合します。」

どうやら、デザインにはいくつかの分野があって、それらの相互の関係性を見出す必要があるらしいのです。一体どういうことでしょう?

NDCグラフィックスは、日本デザインセンターの企業内企業として誕生しました(当初の社名は総合グラフィックス研究所)。今回取材に訪れたのは、2006年に移転された万国橋SOKOにある本社です。社内は「デザインする」NDCグラフィックスと、「それを外に発信できるッグッズにする」エクスポートという2つの会社で構成されています。オフィス中央にはNDCグラフィックスが手掛けたデザインや商品などが展示されており、見学することができました。また、至る所にNDCのデザインとは関係のない雑貨や道具が配置されているため、これらもユニークなアイディアの促す材料なのだと思いました。

インタビューに答えて頂いたのは、代表の金江さんとコピーライターの田中さん。創業者の中川さんは2年前に亡くなり、この日の前日にちょうど命日を迎えたそうです。

みなさんに馴染みのある「明治 銀座カリー」のパッケージや、スポーツ用品メーカー「ミズノ」の店に使われている一部デザインは、NDCグラフィックスで生まれたものです。さらに、神奈川フィルハーモニー管弦楽団の応援キャラクター「ブルーダル」や路線バスのデザイン、横浜チョコレート「赤い靴」などのお土産も製作しており、お話を通してNDCグラフィックスが横浜のまちづくりに深く関わりのあることがわかりました。

このようにNDCグラフィックスはさまざまなモノ・コトを、デザインを通じて世に送り出していますが、その中でも特に大仕事だったことの1つが標準案内用ピクトグラムの製作でした。創業者の中川さんはこれを「デザインのダイアモンド」だとよく例えていたそう。それだけ何度も何度も磨き上げて作られる、美しいデザインなのです。東京オリンピックでも重要な役割を果たすであろうこのピクトグラムは、ユニバーサルデザインであると同時に、まちの中に混在する大規模なアートだということに気づかされました。

インタビューの終わりに最初の疑問を尋ねてみました。デザインの分野を関係づけるとはどういうことなのか。なぜその必要があるのか。

すると、代表の金江さんはNDCの名刺を見せてくれました。驚いたことにその名刺には5つの種類があり、それぞれ描かれているイラストが異なるのです。お話によると、そのイラストはそれぞれ

・プロダクト(モノ)

・プロモーション(見た目)

・アイデンティティ(私は何者か)

・コミュニケーション(情報)

・環境

というデザインをするにあたっての土台となる5つの観点を指すといいます。クライアントの依頼内容によってどの観点が軸になるかは変わってきますが、少なからず広い観点をもって創造することで、デザインを必要とする事業の世界観を確立することができ、ブレのない活動に繋げられるそうです。

日本の広告デザインを牽引してきた方々の思いは、今ここ横浜の中にも「美」を提供し続けてくれています。

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